BPOベンダーにおけるAcsim活用 ─ 提案段階の概算見積作成の効率化
BPOベンダーがAcsimの業務フローとAcsim Chatを活用し、与件段階から概算見積の初版を効率的に作成する方法を紹介します。
はじめに
BPOベンダーにとって、提案段階での概算見積は案件獲得を左右する重要な成果物です。顧客から受領した与件をもとに「どのような業務工程が発生し、それぞれどの程度の費用がかかるか」を迅速かつ妥当な精度で提示できれば、提案の説得力は大きく向上します。
一方で、与件から業務工程を想定し、Excelベースで概算見積を組み立てるには相応の時間と経験が求められることも多いのではないでしょうか。業務工程の洗い出しが担当者の経験に左右されやすく、見積の精度や網羅性にばらつきが出てしまうという声もよく伺います。
本記事では、Acsimの業務フローとAcsim Chatを組み合わせて、与件段階から概算見積の初版を効率的に作成する方法を紹介します。受託後の運用フロー詳細化や業務仕様書の整理については、BPOベンダーにおけるAcsim活用 ─ 業務設計・運用フロー作成の効率化を参照してください。
概算見積作成における典型的な課題
BPOベンダーの提案現場では、概算見積の作成に関して以下のような悩みをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
業務工程の洗い出しが担当者の経験に左右されやすい
与件情報から「どのような業務工程が発生するか」を想定するには、類似案件の経験が大きな助けになります。ベテラン担当者であれば過去の知見から網羅的に業務工程を洗い出せる一方で、経験の浅い担当者が同じ精度で行うのは容易ではなく、工程の抜け漏れが見積精度に影響してしまうケースもあるかもしれません。
提案用フローと見積根拠で似た作業が重複しがち
BPO提案では、顧客への説明用に概要レベルの業務フロー図を作成する一方、概算見積の精度を高めるにはある程度詳細な業務工程の把握も求められます。この2つの粒度の異なるフローをそれぞれ別々に作成することになると、提案準備の工数が増えたり、両者の整合性を保つのに手間がかかったりすることがあります。
Excelでの見積作成に手間を感じることがある
業務ごとの単価や工数基準をExcelで管理し、手作業で概算見積を組み立てているケースは少なくないかと思います。業務工程を一つひとつ費用項目に紐づける作業には一定の手間がかかりますし、業務工程の解釈や費用項目への対応付けが担当者によって微妙に異なることで、見積結果にばらつきが出てしまうこともあるのではないでしょうか。
Acsimを使った概算見積作成フロー
Acsimを概算見積の作成プロセスに組み込んだ場合の基本的な進め方を、ステップごとに紹介します。
| ステップ | 内容 | インプット | アウトプット |
|---|---|---|---|
| 1 | 提案用の概要AsIs業務フローを作成 | 顧客の与件(RFP等) | 概要レベルの業務フロー図 |
| 2 | 見積用の詳細AsIs業務フロー(叩き台)を作成 | ステップ1の概要フロー+与件情報 | 詳細業務フローJSON |
| 3 | 業務ごとの費用感データを準備 | 自社の単価・工数基準 | 費用データファイル(CSV等) |
| 4 | Acsim Chatで概算見積を生成 | ステップ2のJSON+ステップ3の費用データ | 概算見積(月額) |
ステップ1:与件から提案用の概要AsIs業務フローを作成する
まず、顧客から受領した与件(RFP、業務概要、ヒアリングメモなど)をもとに、提案資料に掲載するための概要レベルのAsIs業務フローを作成します。
Acsimの「テキストから生成」機能やAcsim Chatを活用すれば、断片的な与件情報からでもスイムレーン形式の業務フロー図を短時間で生成できます。生成した業務フローはSVG形式でエクスポートし、PowerPointに貼り付けて提案資料に組み込めます。
業務フローの叩き台作成の詳細な手順については、現場ヒアリングを効率化する業務フローの叩き台作成を参照してください。
ステップ2:概算見積の精度を高めるための詳細AsIs業務フロー(叩き台)を作成する
ステップ1で作成した概要フローは顧客説明用として適していますが、概算見積の精度を高めるには業務工程をもう一段階詳細に把握する必要があります。ここでは、Acsim Chatを使って与件を深掘りし、担当者・業務ステップ・分岐条件・例外処理を含む詳細な業務フローの叩き台を生成します。
Acsim Chatに与件情報を添付し、以下のプロンプトを実行してください。以下はプロンプトの例です。案件の特性や与件の内容に応じて、適宜調整してください。
生成された箇条書きテキストをAcsimのAsIs業務フローの「テキストから生成」機能に入力して業務フロー図に変換し、エディター上で必要に応じて調整します。
調整が完了したら、エディター上部のメニューからJSONとしてエクスポートしてください。このJSONファイルをステップ4で使用します。
ステップ3:業務ごとの費用感データを構造化して準備する
BPOベンダーとして保有している業務ごとの単価・工数基準を、Acsim Chatに読み込ませるために構造化データとして整理します。多くのBPOベンダーでは業務ごとの費用感(「この業務は1件あたり○○円」「この業務の時間単価は○○円」等)が社内に蓄積されているかと思います。Acsim ChatはCSV、JSONなどの構造化データを添付ファイルとして読み込めるため、自社で扱いやすい形式で準備してください。構造化データであることが重要です。
なかでもCSV形式は、Excelやスプレッドシートから直接エクスポートでき、最も手軽に整理しやすいフォーマットです。 以下にCSVでの構成例を紹介します。自社の費用体系に合わせて列を調整してください。
| 列名 | 説明 | 記入例 |
|---|---|---|
| 業務カテゴリ | 大分類 | 問い合わせ受付 |
| 業務項目 | 中分類・具体的な業務内容 | 電話受付・本人確認 |
| 単位 | 工数の計算単位 | 件/月 |
| 単価 | 1単位あたりの費用 | 150 |
| 単価単位 | 円/件、円/時間 等 | 円/件 |
| 想定処理時間(分) | 1件あたりの標準処理時間 | 5 |
| 備考 | 補足情報・条件付き単価等 | SV対応の場合は別単価 |
CSVの記入例:
上記はCSVでの一例です。自社の費用体系に合わせて列構成や値をカスタマイズしてください。既存のExcelやスプレッドシートに費用データがある場合は、CSVやTSV形式でエクスポートすればそのまま利用できます。JSON形式で管理している場合もそのまま添付可能です。
ステップ4:Acsim Chatで概算見積を生成する
ステップ2でエクスポートした詳細業務フローのJSONファイルと、ステップ3で準備した費用データファイル(CSV等)の2つをAcsim Chatにドラッグ&ドロップで添付し、以下のプロンプトを実行します。

以下はプロンプトの例です。自社の見積フォーマットや出力したい項目に合わせて、適宜調整してください。
概算見積のアウトプットイメージ
上記のプロンプトを実行すると、Acsim Chatは以下のような構成で概算見積を出力します。
概算見積一覧(CSV形式)
業務フローの各ステップを費用データにマッピングし、想定月間業務量と単価から月額費用を算出したCSVが出力されます。

概算見積サマリ
業務カテゴリごとの小計、月額合計、年額概算が表形式で出力されます。

上記はあくまでイメージです。実際の出力は業務フローの内容と費用データの項目に応じて変わります。出力されたCSVはそのままExcelに貼り付けて、提案用の概算見積書のベースとして活用できます。
ポイント:2つのフロー図を並行して作成する理由
本記事のフローでは、ステップ1で提案用の概要フロー、ステップ2で見積用の詳細フローと、2種類のAsIs業務フローを作成しています。これには以下の理由があります。
- 提案用の概要フローは、顧客に対して「業務全体をどう理解しているか」を示すために使います。顧客が直感的に把握できる粒度であることが重要です
- 見積用の詳細フローは、概算見積の精度を高めるために使います。業務ステップの粒度を細かくすることで、費用項目へのマッピング精度が上がり、見積の抜け漏れを防げます
Acsimであれば、概要フローを起点にAcsim Chatで深掘りすることで詳細フローを効率的に作成できるため、二重作業の負荷を最小限に抑えられます。また、両方のフローがAcsim上で管理されるため、整合性の維持も容易です。
既存のBPOベンダー向けページとの関係
本記事は、BPO提案における「概算見積の初版作成」にフォーカスした内容です。受託後の業務設計については、以下のページで詳しく紹介しています。
- BPOベンダーにおけるAcsim活用 ─ 業務設計・運用フロー作成の効率化:提案段階の業務フロー作成から、受託後の運用フロー詳細化・業務仕様書整理・変更管理までの一連のフローを紹介しています
本記事で作成した詳細AsIs業務フローは、受託後の運用フロー詳細化の起点としても活用できます。提案段階のフローを受託後にゼロから作り直す必要がなくなり、提案から運用設計までの一貫した流れが実現します。
まとめ
BPOベンダーの提案段階では、与件から業務工程を想定し概算見積を組み立てる作業に多くの時間と経験が求められます。Acsimを活用することで、与件情報から概要フロー・詳細フローを効率的に作成し、Acsim Chatで費用データと組み合わせて概算見積の初版を自動生成できます。
担当者の経験に依存していた業務工程の洗い出しをAIが補完し、費用項目へのマッピングも自動化されることで、見積の精度・網羅性・作成スピードを同時に向上させることが可能です。