要件定義フェーズにおけるAcsimの社内活用フロー ─ チーム全体の生産性を高める運用設計

最終更新日: 2026年3月17日

Acsim導入企業の実践事例をもとに、要件定義フェーズにおける社内での活用フローと、組織として効果を最大化するためのポイントを紹介します。

はじめに

本記事について: 本記事は、システムインテグレーター(SIer)やDX支援事業者が、顧客の要件定義を受託・支援する立場でAcsimを活用するケースを想定して書かれています。事業会社が自社のDX推進や内製開発のためにAcsimを活用される場合は、「顧客」を「社内の業務部門」や「経営層」に、「PM/SE」を「情報システム部門の担当者」に読み替えていただくことで、同様のフローを参考にしていただけます。

Acsimをプリセールスや顧客との合意形成に活用する方法を紹介してきましたが、実際のプロジェクトでは、社内チーム内での運用フローの設計も同じくらい重要です。誰がどのタイミングでAcsimを使い、成果物をどのように後続工程に接続するのかが明確でなければ、ツールの効果は限定的になります。

本記事では、Acsim導入企業の実践事例をもとに、要件定義フェーズにおける社内での活用フローと、組織として効果を最大化するためのポイントを紹介します。

社内活用フローの全体像

Acsimを組み込んだ要件定義の社内フローは、大きく以下の流れで整理できます。

インプット(情報収集)→ Acsimでの構造化 → レビュー・精緻化 → 成果物出力 → 後続工程への接続

フェーズ1:情報収集とAcsimへの投入

顧客ヒアリング、既存ドキュメント、業務マニュアルなど、プロジェクトの初期段階で得られる情報をAcsimに投入します。

入力できる情報は幅広く、議事録やヒアリングメモのテキストExcelで整理された業務フローの取り込み別ツールで作成された業務フローや画像データからの取り込みなど、さまざまなエントリーポイントに対応しています。

この段階は必ずしもベテランPMが担当する必要はなく、ジュニアメンバーでも情報を投入すればAcsimがAsIs業務フローの初版を自動生成してくれます。

フェーズ2:AIによる構造化とPMによるレビュー

Acsimが自動生成したAsIs業務フローに対して、PMやシニアメンバーがレビューを行います。ここが「AIが150の情報を出し、人が取捨選択して100に絞る」プロセスの核心です。

DGビジネステクノロジー様の松田氏は、マネジメントの観点からこのプロセスについて次のように評価しています。最初に全体像がテーブルに並ぶことで要・不要の判断がしやすくなり、レビュー時に「何を削ったのか」を明確に説明できるようになった、と。作成者の経験に依存して抜け漏れが発生しやすかった工程が、初期段階での網羅性を確保しやすくなり、マネジメント側としてもチェックが容易になっています。

フェーズ3:変更方針の策定とToBe設計

AsIs業務フローが確定したら、Acsimが業務課題を自動で抽出し、改善の方向性を提示します。ただし、ここでAIが出すのはあくまで叩き台です。実際には、SIerのPMやSEが顧客と共に、業務上の優先度やコスト・スケジュールの制約を踏まえて「どの課題から手をつけるか」「どの方向で改善するか」を議論し、変更方針を固めていきます。

変更方針が定まったら、その課題や目的を具体的にAcsimに入力します。すると、Acsimが変更方針に基づいた変更計画項目(具体的にどの作業をどう変えるかのタスクリスト)を提案してくれます。この変更計画項目もAIによる叩き台ですので、PMやSEが内容を精査し、不要なものを削除したり、足りない観点を補ったりしながら精緻化していきます。

なお、この段階ではAcsimのナレッジ機能が特に効果を発揮します。ナレッジに登録できる情報はSaaS製品やシステムの設計書・仕様書だけでなく、自社の設計ガイドライン、業務ルール、過去プロジェクトで得られた知見なども含まれます。こうした情報をAIに読み込ませておくことで、自社のコンテキストに沿ったより実用的な改善提案が得られるようになります。ToBe設計の具体的なプロセスについてはAIアシスタントを活用したToBe業務フロー作成を、AsIs業務フローの網羅性チェックについては現状業務フローの抜け漏れをAIで検出するを参照してください。

フェーズ4:プロトタイプ生成と関係者レビュー

ToBe設計に基づいて、Acsimから画面一覧・機能一覧を生成し、プロトタイプを構築します。このプロトタイプを社内レビューにかけた上で、顧客に提示します。プロトタイプの具体的な構築方法については、OutSystems UIベースのプロトタイプ構築本格的なプロトタイプ構築を参照してください。

フェーズ5:設計書出力と後続工程への接続

要件定義の成果物として、業務フロー図、ユースケース、画面一覧、機能一覧などの設計書をAcsimから出力します。成果物の生成手順については要件定義・設計プロセスの成果物生成を参照してください。これらの構造化データは、後続の実装・テスト設計・仕様レビューにも活用可能です。業務フローを外部ツールで編集・共有したい場合は、ExcelやPowerPointに業務フローを出力する方法もあります。

PLANET様が重視していたのはまさにこの一貫性で、フルスクラッチ開発において上流で設計した成果物をそのまま下流の開発工程に接続できることが、導入の大きな決め手になっています。

ジュニアメンバーの戦力化

Acsimの社内活用において、多くの導入企業が効果を実感しているのがジュニアメンバーの早期戦力化です。

AIが「要確認箇所」をアラートしてくれる

PLANET様では、Acsimの「要確認箇所をアラートしてくれる機能」が経験の浅いメンバーにとって大きな支えになっていると報告されています。このサポート機能が補助的な役割を果たし、一人である程度の成果物を作れるようになることで、チーム全体の戦力として機能するようになります。

教育コストの低減と採用間口の拡大

PLANET様では、少数精鋭の体制のためこれまで即戦力採用に限定せざるを得ませんでしたが、Acsimを教育の補助ツールとして活用することで、未経験者やジュニア人材でも一定レベルのアウトプットを出せる環境の整備を目指しています。教育コストを抑えながら採用の間口を広げ、組織としての対応力を高めるという戦略です。

ベテランPMのレビュー負荷の軽減

ジュニアメンバーがAcsimを使って初版を作成し、ベテランPMがレビューに集中するという役割分担が成り立つようになります。ベテランの知見は「0から作る」工程ではなく「精度を高める」レビュー工程に集中でき、組織全体の生産性が向上します。

部門横断的な活用の広がり

DGビジネステクノロジー様では、管理会計やバックオフィス部門からも「業務手順の可視化や標準化に使えないか」という相談が出てきています。社内でも暗黙知で回っている業務プロセスは多く、Acsimの情報構造化能力に対する期待はシステム開発部門にとどまりません。

業務フローを可視化することで「誰が・何を・いつしているか」が自然と整理され、部門横断的な業務改善を進めるための共通言語になり得ます。これは直接的な受注案件だけでなく、社内DX推進や業務改善提案の武器としても活用できるポイントです。

運用上のポイント

Acsimの出力を「最終成果物」ではなく「出発点」として扱う

Acsimが生成する業務フローや設計書は、あくまでAIによるドラフトです。最終成果物として品質を担保するのは人の判断であるという前提で運用することが重要です。「AIが網羅的に整理し、最終判断を人が担う」という設計思想を社内で共有しておくことで、過度な期待も過小評価も防げます。

ナレッジ機能で組織の知見をAIに蓄積する

Acsimのナレッジ機能には、対象SaaSやシステムの設計書・仕様書に限らず、自社の業務ルール、設計ガイドライン、過去プロジェクトで得られたノウハウ、社内の承認フローや命名規則なども登録できます。こうした組織固有の知見をAIに読み込ませることで、提案や変更計画の精度が自社のコンテキストに沿って向上していきます。プロジェクトを重ねるごとにナレッジが蓄積され、組織としての設計力が底上げされていきます。

成果物のフォーマットを社内で統一する

Acsimは共通化されたフォーマットで設計書を出力できるため、担当者によってドキュメントの構成や粒度がばらつく問題を解消できます。これは引き継ぎの効率化や、後続工程とのスムーズな連携にも直結します。

まとめ

Acsimの社内活用フローを適切に設計することで、「ジュニアメンバーが初版を作成 → ベテランがレビューに集中 → 構造化された成果物が後続工程にそのまま接続」という効率的なパイプラインが構築できます。属人的だった要件定義のプロセスが組織として再現可能な仕組みに変わることで、PM1人あたりの稼働案件数の増加、人材育成コストの低減、成果物品質の安定化といった複合的な効果が期待できます。

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